2時間ごとの体位変換に頼らずに褥瘡を予防し治療する、画期的な体圧管理!
書籍情報
-
- 監修
- 筑波大学名誉教授 紙屋克子
- 医療法人三和会東鷲宮病院副院長 水原章浩
- 編著者
- JA静岡厚生連 リハビリテーション中伊豆温泉病院診療副部長 恩田啓二
- 定価(本体3,500円+税)
- B5判/104頁/オールカラー/図273点
- ISBN 978-4-906829-07-1
- 発行日 2013年5月20日(第1版)
書評
『患者よ、がんと闘うな』(近藤 誠、文藝春秋、1996年)、『傷はぜったい消毒するな』(夏井 睦、光文社新書、2009年)など、医学界の常識に反する提言に医師は拒否反応を起こす。
褥瘡のケアに体位変換は必要不可欠なのに、体位変換に頼らない褥瘡対策なんか信じられない。それがこの本を手にした私の正直な感想であった。
疑いの目で本を開くと、「治療の原則は原因の除去。褥瘡を治すには除圧が必要」と書かれている。当たり前だ。だからナースは一生懸命に体位変換をやっているのだ。ところが、ページをめくると、「体位変換から除圧の時代へ」「エアマットレスを正しく使う」「センサーパッドで体圧測定」など、刺戟的な言葉が目に入ってくる。
本文を読むと「目から鱗」の連続だ。
「体位変換をするから褥瘡が増える」
「体圧を50 mmHg以下にすれば褥瘡は治癒する」
「おむつはできるだけうすく」
「右手に血圧計、左手に体圧計、ポケットに体温計」
「機械に任せられるものは機械に任せる」。
確かにそうだ。褥瘡管理の具体的な方法と理論的な根拠が、簡潔な文章と豊富な写真で理解できる。
なるほど、そうだったのか。褥瘡は治りにくいのが当然と思っていたが、それは体位変換に頼っていたからなのだ。
「ポケットは皮弁」「切開は最小限」「詰め物はしない」「ギャッチアップをやめる」。褥瘡に関する自分の無知が恥ずかしくなる。寝たきりの患者や高齢者を日夜ケアしている全国のナースや介護士にこの本を読んでほしい。
編著者の恩田医師は「褥瘡なんかこわくない」と言う。
この本を読むと、確かにそんな気分になる。
「中伊豆温泉病院では褥瘡治療目的の入院を積極的にお受けしています」と言う3西病棟スタッフの写真は笑顔が輝いている。
「医療関係者向けの褥瘡対策見学会も行っています」。
伊豆は九州から遠いが、ぜひ一度、見学に行きたいと思った。
2013年5月
久留米大学外科
安達洋祐
本シリーズの特色
- 高齢者の医療は今日ますます重要課題となっています。しかも医療は医師・看護師・薬剤師・介護士(家族)が個別に成り立つわけではなく、チーム医療が必要です。
- そのような観点から、今、お年寄りの治療・看護・介護のために差し迫っているテーマを挙げ、医師とコメディカル双方の側面から解説します。
- 熟練のプロフェッショナルによる、熟達した、根拠のある確かな内容を学ぶことによって、医療スタッフがプロ意識を持って日々の臨床で実践していける書物を出版します。
監修のことば
医療が進歩した結果、脳卒中や認知症で寝たきりになった高齢者も生命を存続させることが可能になってきました。
いまや世の中は高齢者に対する医療、ケアを真剣に考えるときを迎えたのです。
私は以前から、そういった世の中を見据えて「高齢者〜寝たきりシンドロームからの脱却」といった合言葉を掲げ、高齢者のかかえている問題点、褥瘡、栄養、嚥下、リハビリといった問題にどう対処していったらいいかを論点としたセミナーを開催し、地域で啓蒙活動をしてきました。
高齢の患者さんをどう扱っていくかは、目をそらせてはいけない課題です。
彼らは私たちの社会を築き上げてきた人生の功労者であるという視点を決して忘れずに、しっかりと向き合っていきたいと思っています。
このシリーズが高齢者の医療、看護、介護にあたるスタッフの一助になることを祈念してやみません。
本書の特長
- 介護施設でも在宅でも、2時間ごとの体位変換が介護者にとって大きな負担となっています。
- 著者の中伊豆温泉病院ではその問題へ10年前から取り組み、褥瘡治療目的の入院を積極的に受け入れ、受け入れた褥瘡患者の、実に9割以上が完全に治癒または治癒見込みで退院していった実績を達成しました。
- その実績は、きめ細かな「局所の体圧管理」に裏打ちされています。
- 看護師だけでなく、ケアマネジャーや介護職でもコントロールすることが許されている高機能エアマットレスを適切に使用し、「きめの細かい体圧管理」を実行すれば、介助量は大きく軽減されます。
- 本書は中伊豆温泉病院での豊富な経験に裏付けされた「局所の体圧管理」の集大成です。
- 随所に「コラム」「閑話」「よくあるQ&A」「ワンポイント」を織り交ぜながら、予防 もでき、治療にも役立ち、病院や介護施設だけでなく在宅でも十分応用することができる非常に簡単な除圧の極意を示します。
目次
- 1.褥瘡の原因 原点に戻る
- 2.体交に頼るしかなかった昭和時代
- 3.時代は体位変換から除圧の時代へ
- 4.高機能エアマットレスの正しい使い方
- 5.体圧測定の方法
- 6.深い褥瘡が治るストーリー
- 7.ポケットの考え方
- 8.看護師が行う褥瘡対策の実際
- 9.創にやさしい動作介助の方法
- 10.褥瘡ケーススタディ
- 11.仙骨部除圧のためのポジショニングの工夫
- 12.真の原因を探れ!〜症例からの学び〜
- 13.この褥瘡、我々はこう考える
- ◇高機能エアマットレスと私
読者対象
全科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、介護士